2009年9月30日水曜日

第17回 脳の世紀シンポジウムを聴講

本日、有楽町朝日ホールで掲題のシンポジウムが開催されました。将棋の羽生善治名人の特別講演もあるということで、700席以上あると思われる席はほぼ満席状態でした。全部で5つの講演がありましたが、私は将棋に関する3つの講演を聴講しました。概要は以下の通りです。

1.特別講演 10:40~11:30 脳の可能性 羽生 善治 名人(王座・棋聖・王将)
  よく勘違いされることとして、将棋のプロは何百手も何千手も先の手が読めて、その中で手を選んでいると思われがちだが、実際は全然そんなことは無い。将棋はすごい可能性のあるものなので100手とか1000手とかの手が読めても全体からみたら僅か、ほんのひとかけらに過ぎない。プロ同士で話したことがあるが、実際の10手先の局面を予想するのは難しい。10手先の局面は自分が予想していなかった局面になっているケースがほとんど。想定外のことが起こって、そこでどう対応していくかということの繰り返し。将棋の特徴としてマイナスの選択肢が多い。これが囲碁と一番違うところでは無いかと思う。将棋の場合は局面が進んでくるとマイナスの選択肢の方が増えてくる。パスした方がいいといった局面の方が増えてくる。これはどうしてかというと、お互い20枚づつの駒で対局していくので、全体として理想の形を目指すとか、一枚一枚の駒が一番いい場所を目指そうとすると、ルールとしては可能性はある、80通りくらい可能性はあるが、実際に局面が煮詰まってきてくるとプラスの手が見つけにくい。30分とか1時間の長考の時は、2つあって、指す手が無い、プラスになる選択肢が無い、見つからないということで長い時間考える場合と、もう一つは迷っている場合が非常に多い。2時間とか3時間考えればいい手が指せるかと言うと、必ずしもそうでは無くて、今までの対局でも30分くらい考えるとこんな感じになるのではないのかだいたいわかるが、最終的にどちらを選べばいいか、どちらを選択すればいいというところで踏ん切りがつかない、迷ってしまう、ためらってしまうということで長く考えているっということもある。1時間とか2時間とか長いこと考えていると、費やした時間がもったいないんで指すということもある。調子というのはたくさんの手が覚えていられるとか早い時間で見えるというよりも見きれるということの方が調子のバロメータとしてはいい。割り切れる時が非常に調子のいい時。年間2000局くらいのプロ対局がある、自分でも今まで1000局以上指している、それらを全部記憶しているわけでは無いが、並べてみると自分が指したことがあるかどうかはわかる。文章を読んでみて自分が書いたものかどうかわかるのと似ている。最近はデータベースが発達していて、パソコンを使って見るが、早い時は1局1分ぐらいで早送りで見るが、1ぐらいたつと忘れているというケースが多くて、きちんと覚えておこうと思った時は、将棋盤と駒を出してきて並べるようにしている。以下、省略。

2.脳を知る 11:30~12:15 将棋棋士の直感を脳活動から探る
      中谷 裕教 (独)理化学研究所脳科学総合研究センター・研究員

  詰将棋の問題を直感的に解く時には、これまで運動の学習や制御に関わるとされてきた大脳基底核や小脳に活動が観察された等の実験結果の成果の発表。

3.脳を創る 13:30~14:15 経験を積んで直感を養う:コンピュータ将棋と機械学習
      近山 隆 東京大学大学院工学系研究科・教授

  比較的知っている内容だった。将棋ソフトのボナンザはDeep Thought(Deep Blueの前身)の方法(統計的機械学習?)を将棋に応用して大きな成果を得たらしい。また、激指は詰むか詰まないかにコンピュータのリソースの30%を充てているとのこと。これを改善する研究成果の発表もあった。2015年には、今の1000倍のCPU性能により計算上今より6段は強くなっているだろうとのこと。CPUの性能が3倍になると1級もしくは1段強くなるとのこと。チェスのソフトではCPUの性能が倍になるとレイティングが80くらい上昇するというデータを聞いたことがあるので、そんなものだろうと思った。コンピュータが名人に勝つ時期はいつかの質問に対し、30年先だと思っている専門家は誰ともいないとの発言。私自身は以前2020年ころと思っていたが、案外早く2015年頃に訪れるのでは無いかと思っている。金さえあれば、現時点でもCPUを超並列にしたり専用ハードによりプロ棋士の多くに勝てるマシンを創れるのでは無いかと思う。

以上、有意義なシンポジウムでした。
関連URLは以下の通りです。
http://www.braincentury.org/brainsympo/index.html

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